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日高便り

17/06/26

「北海優駿」の夜

北海道事務所・遠藤 幹

 6月1日、地方競馬のダービーシリーズ第2戦の「北海優駿(ダービー)」が、門別競馬場で行われた。この日は、昼過ぎから時折激しい豪雨に見舞われるといった、あいにくの空模様。私が競馬場に駆け付けたのは、晩6時半過ぎで、新旧2つのスタンドのうち、新スタンド「ポラリスドーム」には、200名程のファンが来場していた。馬産地に位置する地元密着の競馬場なので、顔見知りが大変多い。家族連れの生産者や牧場従業員、職場単位でジンギスカンを楽しむグループなど、断続的に雨が降り続く中であっても、皆思い思いの方法でダービーを楽しもうとしていた。
 ポラリスドームに隣接してパドックが設けられているが、雨が続く中では馬見も大変。代わりにドーム内に設置されている「JBCビジョン」で、周回する馬をチェックすることとした。このビジョンは、札幌のテレビ局が所有していた多目的ホールの中にあった大型ビジョンを、種牡馬所有者で構成する社団法人のジャパンブリーダーズカップ協会(JBC協会)がホール解体時に譲り受け、平成21年のポラリスドーム竣工に合わせ、資金提供をして設置したものだが、大画面ならではの臨場感と迫力に満ち満ちている。悪天時の観戦にも大きな威力を発揮することを、今回改めて実感した次第だ。
 パドック脇の軽ワゴン車では、トルコ料理のケバブを販売していた。私は、ケバブサンドを注文した。丸く平たいパンに、その場で調理した熱々のお肉と野菜サラダを乗せ、甘辛いソースをたっぷりかけた出来立てを提供していた。これがワンコイン500円で、ボリューム感たっぷりで大変おいしい。感じの良い店主のお兄さんに聞くと、普段は新千歳空港近郊のアウトレットモール内に出店しているとのこと。「この雨では商売あがったりですけど」と、お兄さんは屈託なく笑った。
 時計は8時半を回り、北海優駿の発走時間が近づいた。北斗盃(北海道の三冠競走初戦)を制した岩手からの遠征馬「ベンテンコゾウ」が1番人気だが、パドックでの雰囲気が良く見えて、解説の高倉克己さんが、「馬がガラリ変わってよくなった」と力説していた「スカイロックゲート」の単複を私は少々買って、応援することとした。雨は依然降り続いている。水の浮いた走路を、バシャバシャと音を立てて各馬は第1コーナーに殺到する。スカイロックゲートはハナを奪い、そのまま軽快に逃げて、4コーナーを回り逃げ込みを図った。そこを道中2番手につけていた人気のベンテンコゾウが外から猛然と追い上げ、2頭の叩き合いとなるが……。ベンテンコゾウが、粘るスカイロックゲートを振り切り突き放したところがゴールだった。応援馬が惜しくも2着だったのは残念だったが、素晴らしいショーを見たような心地よい余韻が私に残った。表彰式後のインタビューで、騎乗していた岩手競馬の村上忍騎手の「人気に応えられてほっとしました」という率直なコメントも印象に残った。
 この日の売り上げは5億5000万円と、主催者計画を1億円上回った。そのうち門別競馬場での売り上げは500万円余り(来場者は600名強)と大変少額であり、ネットや他場での発売が5億円と、売り上げに占める比率は圧倒的ではあるのだが、それでもやはり競馬はライブが良い。小さな競馬場であろうと、天気が悪かろうと、華やいだ雰囲気がなかろうと、馬が走り、関係する人々がいて、応援するファンがいる。それら諸々をひっくるめた全てが競馬の雰囲気を醸し出し、少しばかり人々の心を潤してくれる。降り続く雨の中、それらの思いを身にまとったまま、私は車に乗り込んだ。